日本共産党書記局長 小池晃さんに聞く
年金問題 「首相を完全論破」と話題に
参院選は想定される公示(7月4日)まで2週間を切りました。日本共産党書記局長の小池晃さんは、比例代表候補として東京を活動地域に選挙に臨みます。参院選への決意、東京の選挙情勢をインタビューしました。(荒金哲 写真・五味明憲)
─参院決算委員会(10日)での年金問題の追及が、大きな反響を呼んでいます。
みなさんもびっくりされたと思いますが、政府から突然、「年金では生活費をまかなえないので、2千万円貯金しておかないと、老後の生活が成り立ちません」という報告書が、出されました。総務省の家計調査をもとに、厚労省の課長が金融庁のワーキンググループに出て、現在の年金生活者の暮らしは、年金だけでは月に5万5千円、収支が不足していると話した。それを30年分にすると2千万円、必要になると報告書にまとめたものです。
安倍さん(晋三首相)、麻生さん(太郎財務相)は「不適切だった。誤解を招く表現だった」と言っていますが、誤解の余地もなく、明らかな事実に基づくものです。報告書の表現が不適切なのではなく、今の年金制度が「不適切」なんです。
驚いたのは、あの論戦の後、麻生さんが「報告書は受け取らない」と言い出した。森山(裕・自民党)国対委員長は、政府が受け取らないから、「報告書はもうない」と言っています。2007年の第一次安倍政権の頃、「消えた年金」が問題になりましたけど、今度は「消えた報告書」です(笑)。
国の根本問う機会
─追及の様子を編集した動画が、ツイッター(短文投稿サイト)で250万回以上(18日現在)、再生されています。
手紙や電話でも、たくさん反響をいただいています。安倍さんが逆上して、興奮状態でダラダラと答弁する姿には、あきれてしまいました。あげくに「民主党政権の時は…」って反論してきて。私は民主党じゃありませんからって言ったら、みんな笑っていましたが(笑)。落語家の立川談四楼さんがツイッターで、「(首相が)小池さんに完全論破された」と書かれて、東スポ(東京スポーツ)でも取り上げられました。
5万5千円の赤字というのは、今、年金で生活している人の現状です。これから貯金しろと言われてもできるわけがない。しかも、マクロ経済スライドという仕組みで年金が減額されていくので、いま41歳より若い人は、さらに赤字が増えて月10万円、30年で3600万円が必要になります。国民年金であれば、それよりはるかに大きな赤字になります。
政府として、考え方が違うと報告書を受け取らないのではなく、受け取って、国民に「現状はこうです」と、正直に示すべきです。そうすると、国民から、年金制度を立て直すため、戦闘機の大量購入や、大企業への減税に使っている税金を、まず年金のために使うべきではないかという意見も出てくるでしょう。この報告書を根本的な年金改革の議論、さらに年金改革にとどまらず、この国の根本を正面から議論する機会にしないといけないと思います。
─参院選では、各地の演説で希望を語ることを重視されています。また、新刊の対話集に「政治に希望はある」とサブタイトルをつけられました。
対話集の最初に収録した中野晃一さん(上智大教授)との対談でも、「希望」という話が出てきます。いま、有権者の中、特に若い世代の中には、新しい政治なんかつくれないんじゃないか、自民党の政治は変わらないんじゃないか、というあきらめのような気分もあると思います。
安倍政権のねらいは、国会での議論から逃げる、予算委員会を開かない、必要な資料も出さない、都合の悪いことは、全部ごまかします。そして、ひたすら、国民があきらめるのを待つという、とてもひきょうなやり方です。
そうした時に、「安倍政治はだめだ」と論証抜きに言っても、なかなか受け入れられないでしょう。どうやったら変えられるのか、安倍政治に代わる希望ある日本の姿を語っていくことが、投票所に足を運んでもらうためにも、とても大事だと思います。
共闘勝利と躍進の実現を
─参院選にどう臨みますか。
党の書記局長として、野党各党の幹事長と協議を重ねてきました。32の一人区すべてで一本化できて、共産党が擁立した候補者を、野党の統一候補としてたたかう選挙区も、3年前は1選挙区だったのが、3選挙区5県(福井、鳥取・島根、徳島・高知)に増えました。政党間の協議で13の共通政策もまとまり、中身の点でも消費税増税中止や辺野古新基地建設中止、普天間の早期閉鎖・撤去など、前回より大きく前進しました。
野党候補の一本化は、あくまで出発点です。それぞれの選挙区で、本気で共闘し、勝利するために、選挙区ごとの政策協定づくり、一緒にたたかう態勢づくりが進んでいます。私も各地を回っていますが、この前、岡山に行ったときには、駅前に1500人と、過去最高に近い人が集まりました。立憲民主党、国民民主党、社民党、そして市民団体の「おかやまいっぽん」の代表、そして私が、統一候補になった原田謙介さん(立憲民主党)、共産党の候補者として頑張ってきて今回、立候補を取り下げた住寄聡美さん、共産党の岡山県委員長と並んで、街頭演説をしました。
各党の代表がそれぞれ、共産党の決断に心から敬意を表します、住寄さんががんばってくれた、ありがとうございます、とアピールして、最後はみんなで手をつないで。こういうことが、全国で起こっています。
─すごい動きですね。
同時に、私たちの大きな課題は、共闘の勝利とともに、共産党の議席を伸ばすことが、本当に大事になっているということです。
比例区、そして東京のような複数区で勝利し、共産党が議席を伸ばすことが、野党の共闘を強くします。野党の共通政策を実現するうえでも、さまざまな妨害の動きが出てくるでしょう。アメリカ言いなり、財界中心の政治の根本を正そうという政党が伸びてこそ、野党の共通政策を実現に向けて前に進めることができます。
共闘の成功と、共産党の躍進、二つの課題を何としても実現したいと思います。
比例の波が選挙区勝利にも
─今回、共産党として、「かつてない割り切りで」比例選挙を軸にたたかうとされています。
いま、有権者の選択は、政党選択が中心になっています。比例代表は、全国1区の選挙区で、政党選択そのものが問われるし、同時に、最も死票が少なくなります。同時に、東京選挙区を考えても、選択の基準の一番にあるのは、どの政党の候補者を選ぶのかということです。
比例代表選挙で日本共産党支持の大きなうねりをつくり出し、東京で110万票以上を実現することは、全国で7議席以上を実現するうえでも、決定的なカギを握ります。そして、比例での目標達成の大きなうねりに加えて、吉良よし子さんの豊かな実績と魅力を東京の隅々に広げ抜くことが東京選挙区での勝利も切り開くものだと考えています。
─東京の比例、東京選挙区の情勢をどう見ていますか。
東京は、全国の有権者の10・6%を占めており、全国での議席の躍進にとって決定的です。
しかし、比例も選挙区も率直に言って、まだまだ、躍進の流れになっていません。このままでは、議席を後退させる危険もある、そういう事態だとみています。その意味で、この時期に、どれだけ、東京で共産党の風を吹かしていけるかが、とても大事だと思います。
政策面では、消費税増税を中止して、それに代わる暮らしの3つの希望の提案、憲法、原発、沖縄、そして、今回、大きく打ち出した個人の尊厳を大切にする国にしようという問題。さらには、急浮上してきた年金の問題での、共産党の改革提案。これらを大きく訴え、選挙で、一票で、政治を変えられるんだと有権者に届けていきたいと思います。
吉良さんの印象が
─東京選挙区をたたかう吉良さんへの期待をお願いします。
マスメディアの関係者から、吉良さんが出たことで、共産党に注目する層が広がったと言われたことがあります。普通の会社員だった、今は普通のお母さんの吉良さんが、立ち上がって声を上げ、安倍首相と正面からわたり合っている。そういう姿が、強い印象を与えているんだと思います。
国会質問でも、街頭演説でも、吉良さんは本当に毅然と、正面から怒りをぶつける。それが魅力であり、皆さんの心を動かすんだと思います。東京が生み出した非常に大きな力を持った政治家、かけがえのない議席です。
これから連日のように、都内を回って訴えていきます。私自身も比例代表候補の一人として、党の書記局長として、比例での大きな波をつくり、吉良さんを押し上げる、そういう役割を責任をもって果たしたいと思っています。
工夫した紙面
─最後に、再週刊化11周年を迎えた東京民報にメッセージをお願いします。
非常に工夫、努力され、幅広い文化人、知識人の登場があったり、読ませる企画がありますね。
また、都議会、都政をめぐっては、共産党の都議が増え、いろんな課題を多面的に、現実を踏まえて調査、論戦している姿を、紹介している。羽田空港の低空飛行ルートの問題や、特定整備路線の問題など、東京ならではのさまざまな課題を詳しくリアルに伝えるという点でも、かけがえのない役割を果たしています。引き続き、東京民報に期待しています。
(東京民報2019年6月23日号に掲載)