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牛乳の放射能汚染radioactive contamination

「すべてのデータ公開を」明治乳業元社員 小関守さんに聞く

小関守さん

 牛乳の放射能汚染について、子どもを持つ親などの心配の声が絶えません。牛乳メーカーの独自検査などについて、明治乳業の牛乳製造の現場で長く働き、同社の食品偽装などを告発してきた小関守さん(68・写真)に聞きました。

 私は、明治乳業の牛乳製造工場で42年間働き、現在は退職し、賃金・昇格差別などの是正を求める明治乳業争議団で団長をしています。
 6月、明治乳業と明治製菓が合併して作られた明治ホールディングスの株主総会に出席し、争議の解決を求めるとともに牛乳の安全問題についても質問しました。明治乳業は、株主総会などで、独自の放射能検査は「必要ない」としていましたが、現在は、消費者や小売店などの問い合わせが増えているためにと、独自の放射能検査に踏み切っています。
 親たちの強い求めと運動で、各自治体で牛乳や給食食材のサンプリング検査が行われるようになりましたし、牛乳メーカーも独自検査を行わざるをえなくなったものと思います。子どもたちに将来、甲状腺などのがんが増えることがないように、大人の責任として争議団としても引き続き声を上げ、消費者との連帯も追求していきたいと思っています。
 会社は、牛乳が安全だという根拠に、生乳などについて厚生労働省の指示に基づいた放射性物質のモニタリング検査が定着していることを挙げています。しかし通常、モニタリング検査は、多くの酪農家から集乳した生乳が入ったクーラーステーションからサンプルを抜き取って検査するもので、結果として汚染が希釈されていると思われます。
 入手した厚労省食品安全部監視安全課が作成した資料によると、2011年9月1日午後7時現在で、福島県の乳・乳製品についての検査件数は累計381件、うち18件が規制値超過となっています。
 厚労省に検査の値の内容を聞くと、都道府県がつかんでいるといっており、政府は把握していません。県畜産課に聞くと、この18件は「おそらく酪農家ごとの検査をしていた時のものではないか」という答えでした。市民の不安の払しょくのためには東北6県、関東地方の酪農家ごとの検査を復活させ、すべての数値を公開することが不可欠だと考えます。
 東京都は、検査データを公開しています。これまで牧草として使用するエン麦に、5月の検査でヨウ素、セシウムが検出され、8月には飼料のデントコーンで1・・当たり9ベクレルという実測値が見られます。
 また、財団法人食品流通機構改善促進機構の検査では、8月25日に採取した東京産の牛乳に、暫定規制値以下とはいえ、ヨウ素1・・当たり50ベクレル、セシウム134、137の総計で同50ベクレルの計測がされています。
 東京都の検査は、ホームページによれば、10頭分を混合して検査していますので、もっときめ細かい検査を行って、牛乳の安全性を高めてほしいと思います。
 牛乳メーカーにも、安心・安全のためにやるべき課題は多くあります。以前は商品に製造工場名を印刷していましたが、今では記号表示になっています。企業の社会的責任として、情報開示を積極的に行い、消費者が知る権利を確保した上で、選択できるようにするべきです。
 こうした改善は、酪農家が福島原発事故で被った被害を東京電力、国がすべて賠償することを前提としていることは言うまでもありません。

  

(東京民報2011年10月23日号に掲載)