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都知事選関連 

石原氏辞職に伴う知事選 11月29日告示、12月16日投票 | 12/11/04

石原知事最後の論戦となった9月議会

 東京都の石原慎太郎知事(80)は10月25日、都庁で緊急記者会見を開き、同日付で知事を辞職し、新党を結成して国政復帰を目指すと表明しました。都民生活にかかわる施策を切り捨て、大型開発に資金を投入してきた路線が行き詰まるなか、任期途中で都政を投げ出し国政に進出しようというものです。辞職に伴う都知事選は12月16日投票(11月29日告示)です。

 石原知事は緊急会見で、「日本の頭脳部、心臓部である東京の行政をあずかり、東京の問題は日本全体の問題になると取り組んできたが、国の妨害で進まず苦しんできた」と述べ、「明治以来続く中央集権の官僚制とたたかわないと、この国は沈んで窒息してしまう」などと持論を展開しました。
 1999年に初当選した石原知事は、高齢者の医療費助成やさまざまな福祉施設への支援の打ち切りをはじめ、都民施策の切り捨てを強行。「都市再生」の名の下に、超高層ビル群を乱立させ、外郭環状道路の建設再開などの巨大プロジェクトを進めてきました。
 女性や外国人への差別的発言、東日本大震災の際の「天罰」発言などの暴言を繰り返す一方、都庁への登庁は少なく都政への関心の薄れが指摘されていました。また、家族・身内の重用や豪華海外視察などの都政私物化、1400億円の税金を投入した新銀行東京の破たんや五輪招致失敗などの税金浪費も批判を浴びてきました。都政の停滞と行き詰まりがあらわになったことが、4期目の当選からわずか1年半での投げ出しにつながりました。

日本国憲法を攻撃

 石原氏は会見で新党について、「たちあがれ日本」がつくった政治塾の塾生らを次期衆院選で擁立し、自身は比例代表に出馬すると語りました。「日本が抱える主要な矛盾は、あの醜い憲法。絶対平和主義と、権利と義務のアンバランスが日本人の我欲をつちかってきた」などと述べ、国政でその憲法の全面改定を目指す考えを強調しました。橋下徹大阪市長の大阪維新の会との連携を目指すとしています。
 共産党都議団の吉田信夫団長は同日、「石原知事は、小泉改革以来の大型開発優先、社会保障切り下げと弱肉強食の経済政策などを、都政で先行的に進めてきた。都民に犠牲を押し付けるひどい都政をすすめてきた石原氏が、都政を踏み台に国政に臨むことは許されない」とする声明を発表しました。吉田氏は「都民生活の困難が増しているなかで、社会的弱者はもちろん広く都民を切り捨てる路線のすみやかな転換が求められており、私たちは広範な都民のみなさんとともに、都政を都民本位に変えていく重要な契機としていきたい」と表明しています。
 石原知事は後継の都知事について、現副知事で作家の猪瀬直樹氏の名をあげました。

3選挙区で補選

 知事選と同日投票で都議補選(12月7日告示)が世田谷区、葛飾区、八王子市の各選挙区で行われます。

石原都政14年 行き詰まりの果てに

 石原慎太郎都知事は辞職表明した記者会見(10月25日)で「これからやろうとしていることは、知事として14年間やってきたことの延長です」「都民のためにもっと役立つことをしようとしている」と強調しました。しかし地域防災計画やトップダウンで決めた新銀行東京の経営再建など課題は山積したままで、行き詰まった都政を投げ出したとの印象はぬぐえません。石原都政4期14年間を振り返りました。

福祉を標的に

 「何が贅沢かといえば、まず福祉」(『文藝春秋』 99年7月号)。石原氏は初当選直後、まず手をつけたのが、財政難を理由にした福祉の切り捨てでした。中でも、国の悪政から高齢者の命と健康を守ってきた老人福祉手当(寝たきり手当、月額5万5千円)や高齢者医療費助成を廃止し、無料だったシルバーパス(70歳以上を対象にした都内路線バスや都営交通のフリーパス)は全面有料化しました。
 医療でも地域の小児医療の中核を担っていた都立八王子、清瀬、梅ケ丘(世田谷区)の3小児病院は、都民の反対を押し切って廃止し、16あった都立病院を公社化などで半減させました。

大型開発を優先

 その一方で、破綻した臨海副都心開発を継続させ、「都市再生」の名による3環状道路や超高層ビルの建設推進などを重点施策に位置づけ、推進。凍結していた東京外環道の解除を国に迫り、着工させました。外環道の地下化で計画が立ち消えになったと思われていた地上部「外環の2」の建設にも道を開きました。防災でも都民に自己責任を押しつけ、自治体の役割を後退させ、道路建設を「命の道」と位置づけて建設推進に乗り出しています。
 これに対し立ち退きを迫られたり、住環境の悪化や自然破壊を心配する住民らによる住民組織の立ち上げが相次ぎ、反対の声が大きく広がっています。
 教育分野では学校管理統制を強化し「日の丸・君が代」の強制に従わなかった教職員を処分。処分撤回を求める教職員との裁判は、今も続いています。「破壊的教育改革」を公言し、教育を知事の意のままにしようとしてきました。

トップダウン事業

 石原知事がトップダウンで決めた事業は、ことごとく行き詰まっています。
 16年夏季五輪招致では、150億円もの税金を投入し、4千億円もの招致資金を貯め込んだものの落選。20年夏季五輪に再立候補しておきながら辞職したことについて、これまで都が前面に立って招致活動を展開してきたことを棚に上げ、「主催はJOC。首長の出る幕はほとんどない」(10月25日の記者会見)などと弁解しました。
 中小企業支援を目的に1000億円を投入して設立した新銀行東京は、わずか3年で経営破綻状態に。855億円を毀損(きそん)させ、400億円を追加出資したものの、中小企業向け貸出金残高は5割程度にとどまっており、中小企業支援の役割は発揮していません。
 市場関係者や都民の多くが反対する築地市場(中央区)の江東区豊洲の東京ガス工場跡地への移転では、ベンゼンなどの有害物質による高濃度汚染が発覚。600億円近い予算を投入して、いまも対策工事を続けています。都は14年度中の開場を強引に目指していますが、新たな汚染が見つかるなど対策の欠陥が指摘され、移転計画の撤回を求める声はやみません。

原発ゼロに逆行

 福島原発事故後も原発推進の立場を堅持し、「私は原発推進論者です、今でも。日本のような資源のない国で原発を欠かしてしまったら経済は立っていかないと思う」(11年3月25日、福島県災害対策本部を訪問した際、報道陣の前で)と主張。都立公園などで高い放射能汚染が発覚しても除染せず、都立高校を含め都有施設の調査も拒否。住民から調査・除染を求める要望が強く出されるとともに、都立水元公園(葛飾区)については、共産党都議団の調査で基準値を超える地点があることが明らかになり、都は公園の一部で調査・除染をせざるをえなくなりました。

                (東京民報2012年11月4日号に掲載)