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都議会検証 都政を変える

都立小児あったら… 都民運動と共産党 都政動かす 新生児集中治療室 4年で84床増 | 13/06/13

廃止された清瀬小児病院跡

 石原都政が打ち出した都立病院の半減計画で都立3小児病院(清瀬、八王子、梅ケ丘)が廃止、都立小児総合医療センターに統合されて3年がたちます。いまでも「近くに小児病院があったなら…」という声は後を絶ちません。子どもの命を守り、安心して産める医療体制をどう確立するかは、一カ月後に迫った都議選(6月14日告示、23日投票)の大きな争点の一つです。

 清瀬小児病院さえあったなら、子どもの人生は変わっていたかもしれない―。多摩地域に住む女性は2年前のことを思い出すとき仕方ないことだと分かっていても、ついこう考えてしまいます。
 それは11年3月、中学校の入学を控えた子どもが、夜中に腹痛を訴えたときのこと。いつもなら近くの清瀬小児病院に連れていけたのが、すでに廃止され、府中市に新たに開設された都立小児総合医療センターを頼るしかありませんでした。救急車を呼びました。
 診断はかぜによる腹痛。処置後、タクシーで帰宅しました。ところがその後も腹痛は治まらなかったために2日後、夫の自家用車で再び同センターに連れていくと、盲腸が破裂していたことが分かり、緊急入院することになりました。中学校の入学式に出席できなかった子どもは、その後の学校生活に大きな影を落とすことになったのです。
 都立小児病院廃止の影響は、この家族に限ったことではありません。
 清瀬、八王子両小児病院には、低出生体重児(未熟児)や先天性の病気を持った重症新生児に対して呼吸や循環機能の管理といった専門医療を提供できるNICU(新生児集中治療室)が合わせて15床ありました。それがなくなり、近隣病院だけでは対応できない状況が続いているのです。「異常出産で23区の病院に運ばれた」「ドクターカーが来てくれたが、搬送先を探すのに時間がかかった」などの深刻な事態が起きています。
 また、都が清瀬小児病院の廃止後の地域医療体制としてあげた多摩北部医療センター(都保健医療公社、東村山市)では、循環器疾患の新生児は受け入れることができず、都立小児総合医療センターに搬送せざるをえません。清瀬市内の医療関係者からは「産後すぐの母親の体では、通院はかなりの負担ではないか」という不安が出されています。

公約違反が許した都立病院半減

 石原慎太郎知事(当時)が01年に策定した「都立病院改革マスタープラン」に基づき、都は3小児をはじめ16あった都立病院を半減させる計画を打ち出しました(一覧)。これに反対し拡充を求める都民運動が大きく広がりました。小児病院だけでも60数万人分の廃止反対署名が寄せられました。
 3小児病院の廃止条例は09年3月、自民、公明の賛成で可決されましたが、前回都議選(同年7月)では廃止反対を掲げた勢力が過半数を占め、廃止撤回の可能性が生まれました。日本共産党は8議席にとどまりましたが、この可能性を生かそうと民主党と共同で3小児病院存続条例を提案することで合意。ところが、民主党は廃止後の医療体制を都に要請し、都の回答は廃止の代替えになり得ないのに「及第点」として生活者ネットとともに容認に方針転換し、存続条例案は提案できませんでした。
 日本共産党都議団は廃止に一貫して反対。母子の命を守るために何が必要かを調査し、都と論戦。都政を前に動かしてきました。
 NICUについては、多摩地域の5つの二次医療圏域ごとに整備目標を持ち、身近な地域ごとに整備するよう提起。▽未熟児の出生率が増加していることなどを指摘する中で、充足しているとしていた都を動かし、都全体の整備目標は200床から320床に▽実際に4年間で207床から291床(12年10月現在)に84床の増床が実現▽清瀬、八王子両院の廃止で多摩地域に医療空白地域が生まれることを明らかにし、公立昭和病院で6床設置―など、貴重な前進がありました。
 また、東京都は、都立病院の運営について地方独立行政法人(非公務員型)を「最も柔軟な形態」として経営形態のあり方を検討課題としました。これに対して日本共産党都議団は、大きく広がった都民運動と力を合わせて「都立病院は直営で拡充を」と、くり返し求めてきました。
 新5カ年計画「都立病院改革推進プラン」(5月1日)では、残った8病院の経営の見直しに踏み込むことはできず、計画期間中は直営で運営する方針です。共産党都議団は引き続き経営形態の検討そのものをやめて、直営で拡充するよう求めています。

都に要請する「地域の小児医療を良くする会」メンバーら

=4月25日、新宿区

 「地域の小児医療を良くする会」は4月25日、共産党の大山とも子都議、尾崎あや子(北多摩1区)畠山まこと(北多摩4区)両都議予定候補らの同席のもと、小児外科外来の設置やNICUの新設など多摩北部医療センターの小児医療の充実を都に要請しました。
 同会の小野幸子会長は「小児病院は身近にあってこそ子どもの命が守れるという私たちの思いを受け止めて、共産党は本当に頑張ってくれました。北多摩北部医療センターに不十分ながらも専門外来が設置されたのも共産党の頑張りがあったからです。私たちの願いを都政に届けてもらうためにも、共産党にもっと大きくなってほしい」と話しています。
 


(東京民報2013年5月19日号に掲載)