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都議会検証 都政を変える

「認可保育増やして」 パパ・ママの願い 増設のペース3倍に 認証一本槍に変化 | 13/06/13

 希望しても認可保育園に入れない保護者が、入所の可否の権限を持つ自治体に異議申し立てをする行動が大きく広がった今年、若いパパ・ママの願いの実現は6月に行われる都議選の大争点です。この間、都民の世論、勇気ある認証保育士の告発などで都の認証保育一本やりの姿勢にも変化が始まり、共産党の求めで認可保育園建設のスピードが上がってきています。

 学童保育の非常勤指導員として働く斉藤綾さん(33)=江東区=は夫と1歳の子どもと3人暮らし。夫の仕事は夜間のトラックドライバーでした。子どもが生まれることになり綾さんは、夫に転職を提案。夫は公務員試験に合格し、住まいのある区役所で4月からの採用が決まっていたといいます。
 ところが保育園の審査がある1〜2月、斉藤さんの夫の仕事は「内定」だったため保育園の入園は不承諾でした。
 「1歳児はもっと入れない。何年も待機になったら仕事ができなくなる」と斉藤さん。「認可保育園を建ててほしい。廃止になる公立保育園を使ってでも増やしてほしい」と言います。
 認可保育園に申し込んで入れなかった待機児童は共産党都議団調べで約2万3千人(2月時点)。東京都は認可保育園をこれまで増やしてきませんでした。特に、石原前都知事は、認可保育園は「金がかかる」と言って建設を抑制してきました。
 認証保育所は、石原前知事就任直後、従来の認可保育に代わる「都市型保育」として導入したものです。

食器は100円均一

 「こんな保育園で一日過ごす子どもがかわいそう」─2007年に元保育士の告発による異例の記者会見が開かれ「食器は100円均一で」「子どもが床で食事をしている」などの保育の実態が明らかになった認証A型「じゃんぐる保育園」(荒川区)。
 同園は、株式会社日本保育支援協会(当時)が開設。社長の三谷忠士氏は04年に出版した「保育所ビジネスの始め方・儲け方」(ぱる出版)の中で、「認可外はかなりリスクが少ない商売だ。在庫を抱える心配もない」「これといった特別なノウハウもいらない」と保育はビジネスとしてもうかると主張していました。
 共産党都議団は保育士の告発を聞き取り、情報公開請求など独自の調査を行い、補助金不正受給や子どもを犠牲にする保育ビジネスを記者会見や声明で公表。マスコミも取り上げ世に知られるようになりました。
 ところがその後も三谷氏は、社名を株式会社PRIMUSと変え、荒川区の補助金返還に応じず不誠実な態度を取り続けています。このため、同区は2012年6月、三谷氏を相手に民事訴訟を提訴。東京地裁の裁判は5回の口頭弁論を終え、三谷氏側は「不正受給の事実はない」と否認していると言います。

調査で問題次々と

 じゃんぐる保育園の告発と同時期、株式会社による都内の認証保育をめぐっては、「小田急ムック成城園」の虚偽申請、墨田区内の認証保育所で給食食材費を1日36円で賄っていること、開設からわずか2カ月で突然閉園した「ハッピースマイル東中野駅前園」の偽装申請などの問題が次々と共産党都議団の調査で発覚しました。
 共産党都議団の調査と論戦により、じゃんぐる保育園、小田急ムック成城園、ハッピースマイル駅前園は認証取り消し処分になりました。
 都議会の共産党以外の各党は、認証保育所について、「福祉の新しい形を全国に示した」(自民)、「都民の保育ニーズにマッチ」(公明)「先駆的取り組み」(民主)と絶賛してきました。

共産党に告発 現場分かってくれた

 認証保育の問題で内部告発した保育士の一人は、「共産党に話を聞いてもらって感心したのは、現場のことをよく分かってくれることでした。党の宣伝のためにやるという気持ちがまったくない人たちです。ほかの党と違い、応援したくなる」と振り返ります。
 都は、認証保育所の事前審査時に会計士を、開設後の立ち入り指導に保育士と栄養士をメンバーに加えるなどの改善策を取らざるをえませんでした。
 少しでも子どもに良い環境をと願う都民と日本共産党の質問に押されたように08年12月都議会で石原前知事は、「量と質の両面から保育施策を充実させていきたい」と初めて答弁。翌09年から、認可保育園増設のペースが3倍に上がっていきました(グラフ)。
 そして今年、予算特別委員会で共産党の質問に猪瀬都知事は「認可保育所も増やす、認証保育所も増やす」と答えざるをえませんでした。
 新日本婦人の会都本部が4月23日に行った都への要請では待機児童の親が「3人目が生まれ暮らしが苦しい。仕事に行くために認可保育園に入りたい」と訴え。また、保育士や母親が「保育は共育て」「子ども主体で、面積や職員数の基準を引き上げて」などと求めました。都の担当部長は「まだまだニーズは多いと認識している。これまで以上にがんばっていく」と答えました。

(東京民報2013年5月26日号に掲載)