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2013年 都議選 6月14日告示・23日投票

「オール与党」対「共産党」 各党都議の発言にみる  13/06/05

 告示が目前に迫った都議選(14日告示、23日投票)は、直後の参院選と合わせて国政や都政をめぐるさまざまな争点で、自民党をはじめとしたオール与党対共産党の対決構図となっています。都政のあり方や、憲法、原発など都議選の争点について、この4年間の各党都議の発言を振り返ります。
 異例の金融緩和で「投機とバブル」をあおり、株高を演出してきたアベノミクスに、株の乱高下という「黄信号」がともっています。安倍政権が消費増税や社会保障の削減などで、庶民の暮らしを痛めつけようとしているもとで、都政には暮らしの防波堤としての役割が問われています。

石原都政の継承

 昨年12月に誕生した猪瀬都政は1月、今後3年間の重点政策となる「アクションプラン2013」を発表しました。都幹部が「内容の95%は石原都政を引き継いだ」とするもので、少子化対策や医療対策にはわずか2%、高齢者対策にも3%の事業費しか割り当てていません。他方、東京外郭環状道路(外環道)などの巨大開発が総事業費の31%を占めます。
 暮らしを軽視する「逆立ち」姿勢を石原都政から引き継いだ猪瀬都政に、民主党は今年3月の代表質問で「猪瀬知事の公約は、私たち民主党の目標と軌を一にする」と“与党”を宣言。自民党も猪瀬知事の施政方針演説を引用し、「都議会自民党の一貫してとってきた立場」と評価しました。
 都が主導する巨大開発の一つ、外環道は関越道と東名高速間の16・・に2兆円をつぎ込みます。都は「環状8号線の渋滞解消のため」としていますが、国土交通省の委託調査では、環状8号線31・・の外環道整備による時間短縮効果は81分から75分へとわずか6分。1・あたり12秒にすぎません。
 外環道の事業費2・6・分を使えば、都内全体で待機者が4万3千人に及んでいる特別養護老人ホームが2万人分増やせるほか、780・分で待機児増が深刻な認可保育園が3万人分整備できます。
 都の来年度予算も、外環道整備をはじめとした大型開発重視の姿勢です。自民、民主、公明、維新、みんなの党など各会派は、この予算に賛成しました。

「慰安婦」も歪曲

 憲法や歴史認識も、都議選の争点に浮上しています。自民、維新、みんななど各党は、改憲手続きを緩和する「憲法96条改定」を主張。また、安倍首相による過去の侵略戦争の正当化の動きや、旧日本軍「慰安婦」が必要だったとする橋下徹維新共同代表の発言などが相次いでいます。
 都議会では、日本国憲法を攻撃してきた石原前知事の姿勢を引き継ぐのかという共産党都議団の質問に、猪瀬知事は憲法九条について、「おかしいのではという考え方が出てきて当然」と改憲の必要性に言及。それを受け、自民党の港区の現職は、「認識を一にするもので、知事の発言を高く評価する」と述べました。
 侵略戦争の正当化など、歴史を逆行させるような発言も、都議会で繰り返されてきました。
 民主党の品川区現職は、「あの戦争は、わが国にとって自衛の戦争だった。決して侵略の意図を持って行われた戦争ではなかった」と主張(13年3月13日予算特別委員会)。それを受け、猪瀬知事も「国益のために東南アジアから資源を供給しなければいけない。そういう意味で自衛だ」と答えました。
 慰安婦問題についても、自民党の現職都議(文京区)は、「従軍慰安婦に対する強制連行の事実を裏付ける書類や資料がない」として、「平成19年には、民主党を含む日本の国会議員らが、ワシントン・ポスト紙に第二次世界大戦中に日本軍によって強制的に従軍慰安婦にされたことを示す歴史文書はないと訴える全面広告を出している」と、国際的な批判を浴びた同広告を誇示(10年11月25日総務委員会)。衆院選に立候補した維新の会の元都議(北多摩一区)は「日本政府や軍が従軍慰安婦なるものを暴行、脅迫、拉致を行い、強制連行した事実はございません」(12年9月26日本会議)など、歴史をねじ曲げる主張をしました。

原発再稼働必要

 安倍内閣が原発の再稼働や輸出に奔走しています。エネルギーの最大消費地である東京から、原発ゼロと自然エネルギーへの転換を進めていくのかも、都議選で問われています。
 猪瀬氏は共産党都議団の「原発を必要という立場をとるのか」という質問に、「国が責任を持って判断する必要がある」とするだけで、原発をなくすという立場を示しませんでした。
 自民党の島部の現職は、「安全が確認された原発は再稼働が必要」(12年3月15日予算特別委員会)として、再稼働を主張。民主や公明などの各党も、原発をなくすことは主張していません。

「渡り鳥」10人も

 今期の4年間は、都議当選後に政党の所属を移り変わる「渡り鳥」都議が多くいたのが特徴の一つでした。
 前回の都議選で当選した政党と、今回の公認政党が違ったり、無所属に変わった都議(元職を含む)は10人以上に及ぶ見込みです。
 前回都議選で民主党が掲げた「築地移転ノー」の公約を裏切り、会派を離脱して移転関連予算に賛成した元職(世田谷区)は、その後、自公推薦で区長選に立候補し落選。今回は維新の会から立候補します。
 築地市場や新銀行東京をめぐって都議会が設置した特別委員会の廃止に、民主党会派を離脱して賛成した八王子市の現職も、自民党から立候補します。
 自民党から維新の会に移った元職(北多摩一区)は、昨年12月の衆院選に出て落選し、今回は維新の会から都議選に出ます。
 同氏は、衆院が解散された直後の議会運営委員会に、会派を代表する委員でありながら欠席し、かつての所属だった自民党の委員からも「(重要な議会運営委員会に)理由も付さずにただ欠席というのは、議会人として、認識にきわめて欠けている」と、手厳しく批判されました。


   (2013年6月9日号掲載)