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築地市場移転問題 Tsukiji Shijyo

築地の女将さん、物申す 「市場はいいところ」魅力語るシンポ | 13/06/16

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 築地市場(中央区)で働く女将さんたちが、市場の魅力を語るシンポジウムが1日、浅草三業会館(台東区)で開かれました。汚染が広がる東京ガス工場跡地(江東区豊洲)への同市場の移転に反対する「築地を守る市民会議」と「築地の女将会」の共催です。
 シンポジウム「築地の女将が市場を語る」は青果仲卸業の南雲雅雄さん(64)、市場の場内でトンカツ屋「豊ちゃん」を営む長田光子さん(86)、マグロ仲卸業の帳場を預かる岩井令子さん(64)の3人が、それぞれの立場から築地市場への思いをユーモアいっぱいに語りました。

愛する無駄と本当の無駄

 南雲さんは44年前、学生時代のアルバイトがきっかけで、築地市場で仕事をするようになりました。
 南雲さんは「産業界の人から見ると築地市場は本当に非効率的。だけど、非効率さこそが効率なんです」といい、その理由を「市場は夜中の12時頃から大量の車と人をさばいて、9時には誰もいなくなってしまう。事業経営方針のすばらしさは一言ではいえない。なくすなんてもってのほかです」と語ります。
 そして「効率を追い求めた結果が、格差社会を生んだ。アベノミクスで一部の企業だけが円安で潤って、それが末端の人々に行かないから、魚屋さんも八百屋さんもみんな苦しんでいる」と強調。「無駄を排除するだけの効率第一主義から、愛する無駄と本当の無駄を見分けることが大事。自然共生、文化芸術、風土地域性、日本独自の匠(たくみ)の技を使った新しい日本を生み出す原動力の一つとして築地が力になっていきたい」と表明しました。
 南雲さんは最後に「人も日本も好きです。もっと好きなのは築地です。愛した女(築地)を捨てるなんてできません。愛を全うします」と語ると、大きな笑いと拍手が起きました。

築地で再整備やり遂げたい

 長田さんは築地歴約30年。「結婚する時には、お店に出なくてもいいという約束だったのに、結局出るようになりました」と明かします。トンカツ屋は父親の代、大正時代から日本橋でやっていて94年の歴史があります。「今はトンカツ屋に来るお客が少なくなって、ここでアピールしないといけないと思ってきました」とのべ、場内の笑いを誘いました。
 専業主婦でしたが、忙しいときに手伝い初めてから、仕事をだんだん覚え、夫が亡くなってからは、自ら店を切り盛りしてきました。「ここに来て、汚い土壌の所に移るのはいやだし、いろいろ悩みが多くなりました。私も権力に立ち向かいたいという気持ちが強いものですから、何とかこういう集まりを通して、みなさんと(築地での再整備を)やり遂げたいと思っています」と力を込めました。

地震に強い築地 リフォームで

 岩井さんは「現場で働いていないので、実感もないので競りの様子も分かりません。でも、主婦として、市場がどう変わればいいのか話させてほしい」と切り出しました。
 岩井さんは「築地のいいところ」について、東日本大震災で液状化が起きなかったことや発泡スチロールの箱も落ちてこなかったというエピソードを紹介。「地盤が固く液状化がなく、道路がつながっているので食料の備蓄基地として孤立することもない」と強調しました。
 その上で「関東大震災後の復興建築として知られていて、鉄骨の組み方が独特で世界遺産にという声があったぐらいだと聞いています。ただ何せ年数がたっているので老朽化はしています。でも、今の市場はそういうところこそ非効率でいい。リフォームすれば十分だと思います」と語りました。

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生産者と商店街守る市場のシステム

 シンポの後、「築地を守る市民会議」の大城聡弁護士と東京中央市場労働組合(東中労)の中沢誠書記長が築地市場の移転問題について対談。市場移転の現状や問題点を明らかにし、今後の運動について提案しました。この中で中沢書記長が、生産者と商店街を守る市場の役割について語りました。その部分を紹介します(要旨)。
 築地の市場のシステムの中で商店街を守る、もう一つが東京に集まったお金を地方に返すという大きな役目があります。
 競り台に立っているのが卸業者で生産者から魚を預かって、売れた分の5・5%が卸業者の取り分なので何とか高く売ろうとする。買う側は仲卸。いかにいい品物を、安く手に入れるか、これが目利きです。知らずに卸業者は生産者を守るようになっているし、仲卸は自分が儲けようとすると魚屋さんや寿司屋さんを守ることになります。
 同時に、競りは品質に値段をつけるので、たくさん買っても少し買っても値段にそれほど差がつかない。競りをやらないと、一山なんぼという買いたたきがおきるんです。魚を見る目、一つで大きな資本とも対等で商売できるのが競りの制度です。1999年と2004年の2回の規制緩和でやらなければならないシステムではなくなりましたが、市場の現場の努力で守られています。
(「東京民報」2013年6月16日号に掲載)